「愛先生となにか相談してた?僕が部室に来る前に。」
「…うん。お節介かな。」

いつも困ったくらいに角度の違った言葉を返すアキが、珍しくおとなしい返事を返す。
「いや…。ありがと。」

話の内容を聞きこそしていないものの、なんとなく察しはついていたりする。最近になってやっとその辺を理解できるようになったというべきなのか。

「で、アキはどの辺まで知ってるの?僕のカラダの事。」

そう発する僕の声に、アキは驚いたような顔で僕の顔を見る。

「知らない方がよかったっていうのもあるんだね。愛先生の大学卒業後の足取りを調べている最中に、潰れた遺伝子工学の研究所があって。」

アキは、真剣な顔で僕の話を聞いていた。僕は、目の前のプリンタで、地域新聞のデータベースから検索したそのニュースの記事をプリントアウトして、アキの前に出した。

「どう握りつぶされたか知らないんだけど、その地域の地方紙で小さく書かれている程度のニュースで、体細胞クローンを作ろうとして被験者の皮膚細胞から受精卵をつくった事で関係者が内部告発により逮捕されたって事案。」

今度は学術データベースを検索して、体細胞クローン関係の資料を探し出す。

「この件で使われている方法がクローン羊のドリーに使われている例にそっくりだったので、ドリーについて検索をかけたら、ほら昔入院したときに、僕の周りでお医者さんが言っていた事にフラッシュバックしてダブるんだ。ただ、記憶としてしか残ってなくて、病院のカルテはデジタルデータへの移行の際に最新のデータのみで更新して原本がないだとかいう話だった。」

僕がそう話すと、アキの目からは涙がこぼれているようで、小さく口を開いた。

「…ごめん。」
「ちょっとまった。まだ仮定の話であって、これが正解って訳じゃない。仮に正解だとしても、アキが謝る必要はどこにある?お願いだから、いつものアキでいて?」

ちなみに、この一連の話は部長と愛先生が陰からこっそりと見守っていたのはまた後で聞いた話で。