撮影に関わる法的問題について(リプトンCM)を答えてみる

※記事中に一部、アフィリエイト広告による商品へのリンクが含まれている事があります。※

法律の事に疎いんですが、Google先生に手伝ってもらいながら、ちょっと答えてみようと思います。

isologue – by 磯崎哲也事務所: 撮影に関わる法的問題について(リプトンCM)

※7/8追記※
!注意!
以下の回答は後藤道則の主観が多く含まれており、必ずしも正しいとは言えません。鵜呑みにはされず、もし似たお悩みをお持ちであれば、関係の法律及び省令、条例および判例をご確認していただくか、お近くの弁護士にご相談いただく事をお勧めします。
!注意!



問1

学校内を歩く人物が写った写真を、本人の許可を取らずに撮影して私的に利用する場合に発生しうる問題について、法的な見地からあなたの考えを述べなさい。

私的とはいっても、他の人の目に触れる可能性はあり、憲法13条における「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」に含まれる(と考えられている)幸福追求権に接触する可能性があり、相手が知名度の高い人物である場合、財産権であるパブリシティ権に触れる可能性がある。

また、それにより相手の(他人にとって)知られていない情報が含まれ、一緒に含まれている場合もあり、憲法13条「個人の尊重」で保護されているはずの被写体のプライバシーを侵害している可能性がある。
また、それらは「個人情報の保護に関する法律」の17条で禁止されている不正な手段とも判断できるし、万が一誰かに譲渡してしまった場合、16条で規定されている目的外の使用に接触すると考えます。また18条に規定されている利用目的の通知に関してもできておりませんので、適用除外に該当する用途でない限り、罪を問われる可能性は高い。

問2

このCMには、なぜ、上記のような注意書きを表示したのでしょうか?

CM製作者の立場としては、CM演出上はずせない演出ではあるが、よく理解をしていない方が「問題のない事だ」と勘違いをしてトラブルを発生させる可能性があり、そういう意図ではない事を示す必要があった。
経営者の立場としては、演出としては高校生活の一場面としてありそうな風景ですし、ターゲットイメージにあっていますが、法律面はもちろん、倫理面の立場(コンプライアンスでしょうか)から、何らかの注意を促す必要があったため。

….磯崎さん、何点でしょうか?

(追記:トラックバックが届いてない様子。…..ブロックされてるのかな)

コメント

  1. もこ より:

    初めまして。
    本家さんがなかなかコメントを受け付けてくれないのでこちらをお借りします。
    問1も問2もほぼ同旨なのですが、小生なら問1に判例を付け加えます。
    公的機関に属する警察官がデモに参加中の私人を撮影する行為に付き、「憲法13条は、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容貌等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない。」との判断がなされている。(最高裁昭和44年12月24日大法廷判決・京都府学連デモ事件)

  2. もこ より:

    憲法13条の規定は国家(地方公共団体を含む)が私人に対して幸福追求権を保障するものであり、私人が私人の権利侵害をした場合には直ちに適用されるものではないが、私人間においても「一般人であれば、自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え、このような写真を撮影されることを望まない」と解される。(東京地裁平成17年9月27日判決)
    写真の撮影が公共の利害に関する事項と密接な関係があり、専ら公益を図る目的で行われ、方法がその目的に照らし相当なものであれば、肖像権の侵害は阻却されるが(上記東京地裁判決)、本件においては撮影者の個人的趣味によるものであり公共性・公益性・相当性も見いだせないので肖像権の侵害が認められる。
    以上により、許可なく他人を撮影した場合は肖像権の侵害に当たる。
    —————————————————————
    ここからは余談ですが、「撮影態様が、原告の私的な生活をのぞき込むようなものではなく、公道を歩行中の原告を撮影したもの」であったりした場合は違法ではありません。(岡山地裁平成3年9月3日判決)

  3. miti より:

    もこさん はじめまして。
    トラックバックもなかなか反映されなくて、
    「朝起きたら、改めてトラックバックしなおさないと」と思っていたところで、
    なにが起こっているのか、まったく….
    書いたあとに、なにか足りないなぁと思ってたのですが、
    判例の事すっかり忘れてました。
    いつも思うのですが、なぜ法律って、昔からの文語体のものはもちろん、
    最近の口語体のものも、なぜああ小難しい書き方されてるんでしょう。
    ….今回の件には関係のない話ですが。

  4. もこ より:

    mitiさん、こんにちは。
    >いつも思うのですが、なぜ法律って、昔からの文語体のものはもちろん、
    >最近の口語体のものも、なぜああ小難しい書き方されてるんでしょう。
    小生は何にも関与していないので、そう訊かれると困ってしまいますが・・・(^^;
    難しいと感じるのは、余りに法律が曖昧な表現だからではないのでしょうか。
    刑法などの罰則規定で考えると、時代の流れによって善悪の価値観などの社会通念が違ってくるので(例えば「わいせつ」の概念)、広範な意味合いを持たせてその時代の裁判官の判断に委ねているのではないかと。
    あくまでも私見ではありますが・・・。

  5. miti より:

    もこさん、こんにちは。
    すいません、今度どっかで国会議員捕まえて聞いてみます。
    ….とは言っても、もよりにそんな議員を滅多に見かけないんですけど。
    たしかに、「曖昧」というのはあるかもしれませんね。
    ただ、曖昧すぎて(適用される業務に従事してる人にとって)厄介な場合も
    ありますし、曖昧が故に、変に解釈して省令をつくってしまったりする部分も
    あるので….さて、その文句をどの政治家にぶつけよう。

  6. 通りすがり より:

    ぱっと気づく範囲でいえば,以下の通りです。
    肖像権,あるいはプライバシー権の問題はあり,撮影された人が不快に思えば不法行為に基づく慰謝料請求という話はあり得ましょう。
    パブリシティ権については,撮影者が当該写真を商売に用いて顧客を呼び寄せるような行為をすれば,その行為について不法行為に基づき損害賠償請求はできましょう。しかし,「私的に利用する」という限定がついている以上,そういう話にはならないでしょう。
    個人情報保護法云々の話は一切当てはまりません。同法16条,17条,18条はすべて「個人情報取扱事業者」の義務を定めています。そして,「個人情報取扱事業者」とは,同法2条3項によると,「個人情報データベース等を事業の用に供している者」ですから,明らかに写真を1枚撮影しただけの女子高生は該当しません(さらにいえば,同法施行令により,5000件以上の個人情報を個人情報データベース等として所持し事業に用いている事業者が個人情報取扱事業者とされています)。なので,本件についていえば同法15条以下を云々することはあり得ません。

  7. miti より:

    通りすがりさん
    確かに「私的に利用する」以上はパブリシティ権は関係ないんですよね。
    個人情報保護法云々に関しても、確かに当てはまりません。
    ただ、細かな人物像や証拠がある訳ではなく、私達が手にいれている情報は
    それ「だけ」です。問題の趣旨としては「注意すべき点」を洗い出すことだと
    思いますから、多少深めに掘る必要があると思いました。
    まず、「私的に利用する」という限定の点ですが、もしそれが民事で言う原告
    被告双方が同じ見解であればなんら問題ないのですが、これが被告の主張で、
    原告は私的利用の範囲から逸脱していると判断したら?
    個人情報保護法云々の話に関しては、「実はそれに限らず件数を重ねている」
    ケースを想定していると考えてもらえばいいかと思います。
    (ただ、まあこの件は強引で、回数を重ねていたとしてもそんな大量の件数
    は実際はムリでしょうけど….)

  8. 通りすがり@6(その1) より:

    確かにいろいろ条件を付せばパブリシティ権も個人情報保護法も問題になるかもしれませんね。ただ,リプトンCMを前提とする設問からはかけ離れるのではないでしょうか。
    仮に特殊な条件を前提に論じるならばそれを明示しないと誤解されます。特に,個人情報保護法については,何でもかんでも適用対象となるかのような誤解が流布されており,それを助長するかのような記述は問題だと思いました。
    原告被告の主張が対立している場合についてですが,その場合,原告の判断内容はあまり問題ではなく,主たる論点は,客観的に見て「私的に利用」と言えるかどうかでしょうね。裁判官の目から見てどうか,です。問題文が「撮影された者からなし得る請求として考えられるものを挙げよ」なら別ですが…(ちなみに,細かいことをいえば,パブリシティ権は裁判例上は「財産権」ではなく「人格権」に基づく権利だとされています。学説上は対立がありますけどね)。

  9. 通りすがり@6(その2) より:

    また,個人情報保護法を問題にするための条件は,件数だけではありません。
    「個人情報取扱事業者」とは,「個人情報データベース等を事業の用に供している者」(同法2条3項本文)であり,かつ同法2条3項各号の除外事由に当たらない者(同法2条3項但書き)です。
    したがって,要件は,
    1)「個人情報データベース等」を扱う者であること
    2)個人情報データベース等を「事業の用に供している者」であること
    3)国の機関,地方公共団体,独立行政法人等,地方独立行政法人ではないこと
    4)「その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者」ではないこと(=扱う情報の対象人数5000件を超えないなど(個人情報の保護に関する法律施行令2条))
    です。

  10. 通りすがり@6(その3) より:

    4)は件数の問題ですし,3)はどうでもいいので放っておくと,1)2)が残ります。1)の「個人情報データベース等」は同法2条2項に定義があり,要するに検索できるように体系化されたデータベースですね。2)は同法の「事業」とは,「一定の目的をもって反復継続的に遂行される同種の行為の総体を指す」と解されており(http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/gimon-kaitou.html#2_17),そのような事業のためにデータベースを用いることが必要です。
    すると,課すべき条件は,
    a)5000件以上の写真を扱っていること
    b)当該写真をデータベースとして体系的に整理していること
    c)何らかの「事業」を行っており,そのために写真データベースを用いていること
    です。したがってこれをすべて満たすならば,個人情報保護法15条以下の話が出てきます(ちなみにまたまた細かいことをいえば,16条等に違反しても直ちに罪に問われるわけではない。34条,56条参照)。

  11. 通りすがり@6(その4・完) より:

    おそらく以上の話については,なんでこんな小難しいことを…と思われるでしょう。なぜ小難しいかといえば,法律が非常に詳細に定められており,正確に論じるためには様々な細かい条件を付さなければならないためです。その意味で,もこさんの「法律は曖昧だから小難しい書き方をしている」は誤りだということになります。曖昧な方がある意味わかりやすいのです。
    法律の話をする場合は,条文をしっかり読み,その適用要件を詳細に吟味することが必須です。また,条文に特殊な用語があればその定義を確かめなければなりません。当該法律に定義規定があればそれを,なければ判例・学説がどう解しているか,を見ることになります。

  12. miti より:

    「法律は曖昧だから小難しい書き方をしている」ではなく、「法律は曖昧だから小難しく感じる」だと思います。正直、意味合いが違ってくると思うんですよ。
    憲法は、大本の部分を示すもので、ただその分、曖昧に作ってあって、それを補完するために、法律があって、でもその法律もまた曖昧で、それを補完するために、省令や、地域固有の問題を条例で決めている。曖昧の定義もまた人によって違って「ナニを言ってんだ」といわれるかもしれませんが、世界中の法治国家に関してはだいたいそんな感じになってるのではないかと。
    なので、条文をしっかり読み、その適用要件を吟味しなければいけないというのはごもっともだと思います。それが成り立っていないのなら、その旨が分かるように書くべきで、たしかにその分が欠けていたかと思います。今後気にしながら書きたいと思います。

  13. 磯崎さんから来ました。 より:

    どうも。お初です。
    興味深いやり取りだったのに、訳のわからないこと
    を言う人が来ちゃったので停滞しちゃいましたね。
    法律が詳細に定められており正確に論じるためには
    様々な細かい条件を付さなければならないためです。
    誰も賛同してないし。
    矛盾するし。
    mitiさんも、もおさんもどうしてこんな低次元な説明を
    しなければならないのか!と、深いため息を
    ついていることでしょう。
    もう、mitiさん大正解ですと宣言しちゃってくださいよ、磯崎さん!
    正解はmitiさんとコメント1.2のもおさんで出尽くしちゃってるんですから!

  14. miti より:

    これもかなりの部分が主観ですが、
    法律が文章である以上、読む人の感覚によって「感じ方」が変わるが故に、
    いろんな意見があって当然だと思うのです。
    それぞれの解釈の元で、補ったものが省令であり、条例であり、
    そして解釈が真正面にぶつかって裁判官が下した解釈が判例なのだと思うのです。
    ただ、通りすがりさんの意見も思うところがありまして…..
    言葉が足りなかったのかなぁ。と。
    昨今、創作の世界にも影響が及ぶ法律が登場して、話題としてはもう外せないと
    思うので、ちょっと「今後」に悩んでいる最中です。

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