愛先生の話

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この同好会に入った直後には、最初に部内の誰かを調べろという「宿題」がついてくる。

無論、その「宿題」を置き去りにしていても、部活はできるのだけど、何というか「先輩の取材に同行して学びはじめる前に、自分ではどんな手順を踏むのか考えてみよう」という事らしく。対象は自分以外であれば誰でもいいらしい。


誰でもというと、アキの事をとも思ったのだけど、怖いところを見せられるような気がするので、やめた。そうでなくとも、この同好会に入ってからアキのイメージが180度変わったのにさ。
次にと考えると、僕としては愛先生が気になってしまうので、愛先生にしてみる事にした。もちろん、アキ以上に怖いところを見てしまうような気がしなくもないのだけど、まあ愛先生に限ってはある程度までは想定内だし。

愛先生本人については、にこりと「頑張って」と言ってくれたのだけど、部長についてはちょっと苦笑いで、「まあ、ごく普通レベルでいいよ。」と言っていた。なんというか、なんか怖い。

割と簡単に出てきた内容としては、愛先生がこの学校の卒業生ということ。この報道同好会の前身である報道・新聞部の設立メンバーらしい。その中に僕と同じ名前のユウって人がいた。
愛先生はユウさんとペアで動くことが多かったらしく、それは高校卒業まで続いたらしいのだけど、愛先生は大学の教育学部までストレートで卒業したのに対して、ユウさんは大学に入学するも、フリージャーナリストとして週刊誌への売り込みを開始、成功したものもつかの間で、取引先の編集長に「面白いネタが見つかった。ちょっと難しいところだから、しばらく音信不通になる」との連絡後失踪。

成功した直後に、プロポーズされて二人は婚姻届を出したらしいのだけど、失踪のタイミングがあまりにもそれから近かったらしく、当時愛先生も疑われたらしいのですが、財産よりもむしろ借金の方が多かったようで、特に2人の間でそのような事を疑う事柄が無かった為にすぐに疑いは晴れたのだけど、ユウさんの足取りはつかめず、捜査も縮小されたそうです。
そのために愛先生は教員免許は受けるものの、すぐにどこかの学校に就職する事はせずにユウさんの足取りを探しに旅に出たのですが、小さな断片こそ見つけたものの、決定的な情報を見つけられずに失踪から7年が経ち、同僚やユウさんの出身の養護施設の先生に、「もう割り切った方がいい」と薦められる形で、普通失踪の失踪宣告の申請を行ったとの事。

道中で調べた成果の一つとして、「(当時の)部の形では、どうしても行動範囲に制限が出来てしまうし、だからと言って自由に取材を認めるには、記者を守るだけのバックアップ体制がない。それがユウさんをそういう状況に飛び込ませた理由ではないか?」と考えるようになった為に、母校に乗り込み、部の改革を提言した所、校長先生が、「うちで愛先生も教鞭をとる事」「バックアップの部分に関しては愛先生自身で作ること」「学校新聞の権限は残すけど、独立採算で」「ビジネスノウハウは、他の部が望めば教えてあげて欲しい」という条件をつけてゴーサインを出した事で現体制になったとの事。
ちょっと気になるのは、それ以外に1,2個条件があったらしい事と、その直後に出資母体というか運営母体が変わったという事が少し気になるのだけど、その辺の情報は複雑になっていてよくわからない。

そのバックアップ部分の会社は、卒業してから先生じゃなかった期間に、足取りを調査をする為の母体として作った会社がベースになっているそうなのだけど、内容についてはそこまで深くは言えないのだけど、ここまで調べてて足取りにたどり着けないのはないだろうと思うのだけど、でも実際そこから出てこないのは事実で。

「仕方ないなぁ…。行方をくらましているのなら本名で活動してるとも思わないけど、中小の出版社も含めて、報道関係の中にユウって名前があるか探してみようかな。」

データベースや登記簿をつきあわせてみると、一つだけ気になる会社が出てきたのだ。律儀に名字だけ偽って活動していたのか?と。ただ…。

「先生?先生の元彼がトランスセクシャルしている可能性ってあるんでしょうか?」

愛先生は、その質問に対してにこっと笑って、一枚の写真を見せてくれた。

「その辺も、キミにそっくりかもね…」

その写真には、若き日の愛先生にゴスロリの衣装を着せられて嫌がっている女性…のような人が写っていた。

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